傷害罪|蟹(カニ、かに)の茹で方で喧嘩→刃物で刺す→傷害
先日、大阪の飲食店で、カニの調理方法をめぐり口論となり、カッとなって相手を刃物で刺したという事件がありました(なお、3月31日の時事通信発表では「調理方法をめぐって口論」という内容が書かれていたのですが、別の続報では「ゆでたカニを触ったことが原因」と書かれていました。この辺りは捜査の進展を待たないと分かりません)。
いずれにせよ、わざと他人に怪我を負わせると傷害罪になります。
先月、マック赤坂氏が大阪市長選挙の際、橋本徹氏の個人演説会場で羽交い締めにされて軽いけがをしたというニュースがやっていましたが、被害届を出すのであれば傷害罪でしょう。
刑の範囲は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金とかなり幅があります(刑法204条)。
この幅の中からどうやって実際に刑の重さが決まるのかというと色々とあるのですが、まず重要なのが「怪我の程度」、そして次くらいに重要なのが「動機」です。
手元にある「量刑調査報告集(第一東京弁護士会 刑事弁護委員会)」を見たところ概ねの相場は、10〜20日程度で治るくらいの怪我を負わせたときは罰金30万円又は懲役8ヶ月〜1年(執行猶予付き)、もっと重い怪我だと懲役2〜3年(執行猶予がつかないことも多い)、治らないような怪我だと懲役4〜5年以上といった感じでした。
なお、私が実際に事件を扱ったり人から聞いたところからすると、「傷害はほとんどが懲役3年以下、6割が執行猶予、懲役7年を超えるものは100件に1件もない」というイメージです(あくまで私個人の感想です)。
さて、カニの件ですが、報道によると被害者は全治1ヶ月の怪我を負ったそうです。
また、刺した動機は、「カニをめぐる口論でカッとなった」ということですので、これだけ聞くとかなりどうしょうもない理由で刺したんだなあとなり、同情の余地はほとんどありません。
上に挙げた基準だと「懲役2〜3年(執行猶予がつかないことも多い)」という辺りに近い気がします。
とはいえ実際加害者に会ってみると、以前からいじめられていて鬱憤が溜まっていたとか、直接の原因は人格を批判されたからだとか、先に手を出したのは被害者だといった事情が出てくることも多いので(だからと言って刃物で人を刺す理由にはなりませんが)、きちんと情状を主張できるのであれば、執行猶予がつくかもしれません。