大津いじめ自殺事件の加害少年(保護観察と不処分)のその後
何年か前、大津市でいじめを受けた中学2年生の男子生徒が自殺したという事件がありました。
この件で、「保護観察処分」を受けた加害者の少年1人と、「不処分」とされた少年1人が、審判を不服として大阪高裁に抗告したようです。
そもそも処分としては重いのか?
メディアでは、人が死んでいるのに「不処分」とは何事か、という意見が多かったように感じました。
少年審判で下される決定には、少年院送致や検察官送致という重い処分もあります。
今回下された不処分や保護観察というのは処分の中では軽い方です。
例えば、三田佳子さんの息子は覚せい剤取締法違反で保護観察になっています。
結果だけ見ると、直接的な被害者がいない覚せい剤で保護観察なんだから(もちろん、これも重大な事件ですが)、人が亡くなったらもっと重くてもいいのでは、と感じるのももっともでしょう。
とはいえ、審判で認定されたのは、恐らく脅迫や暴行・傷害等のはずです。
死亡という極めて重大な結果を招いていますが、傷害行為等による怪我が「直接の」原因となって亡くなったような場合より、結果との関連性が少ないと判断されたのかもしれません。
まあ、この辺りは普通に考えると、いじめた→自殺したのだから思いっきり関係があるように感じるのですが、裁判所はそのように考えないのです。
また、少年事件の場合、家庭環境などを調整して今後非行に及ばないような体制を整えることができれば保護観察になりやすくなります。
以上、色々な点を考慮して最終的に不処分や保護観察という結果になったのでしょう。
加害者の少年は何が不満で「抗告」したのか?
「抗告」というのは決定等に対する不服申立てをいいます。
字のイメージからして何かに不服があったのだろうという予想はつくので、「不処分」の少年が不服を申し立てたことに対しては、「反省していないのでは」といった意見や、「もっと重い処分にしてくれということか!」といった意見が散見されました。
さて、少年審判でなされた決定に対する「抗告」は、法令違反があった場合や処分が不当に重いという場合のほか、「重大な事実誤認」があった場合にも行うことができます。
不処分で抗告をしたということはおそらく、やってない分のいじめをやったことにされたとか、関係ないことまで責任を負わされたとかで不服を感じたのかもしれません(本当のところは分かりません)。
ただ、そもそも「不処分」の場合、たとえ非行事実を認定したものであっても抗告の対象にならないという最高裁の判断があります(最決昭60・5・14)。
そうすると、バッシングを受けると予想されているのにわざわざ通らない抗告をしたのか?それとも何か別の理屈があって実はこの抗告は通るのか?といった疑問が出てきます。
この辺りは考えたのですが今ある情報からだけでは分かりません(もちろん、本件の弁護士はその辺りも全部考えて今回の抗告に及んだはずですが…)。
結局、どんな理由で抗告したかを報道の際にちょっと書いてくれれば加害者に対する批判も少なくなったかも分かりませんし、どんなことがあったのか考えやすくなるのになあと思った次第です。
追記(平成26年12月2日加筆)
平成26年11月20日付けで少年2人の抗告が棄却されました。2人は「事実に誤認がある」として抗告していたようです。どんな誤認があったのか、私、気になります!