3Dプリンター銃の「製造防止」が技術的に不可能な3つの理由

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3Dプリンター銃の「製造防止」が技術的に不可能な3つの理由

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3Dプリンターで自作した銃を所持したという容疑で、神奈川県の男性が逮捕されました。
データさえあれば、殺傷能力を持った拳銃を3Dプリンターで簡単に作ることができる時代となりました。
3Dプリンター銃の設計図DL
なお、現在の3Dプリンターはプラスチックの樹脂のようなものを固めて形成しているのですが、金属のような硬いものでも同じような原理で作ることができるようです。

 

今後は密輸などという危ない橋を渡らずに、国内でどんどん3Dプリンターで作成した銃が流通するのかもしれません。
というか、もう密かに工場ができている可能性すらあります。恐ろしい話です。

 

 

さて、メディアでは「3Dプリンターで銃を作ることを技術的に防止するにはどうしたらいいか」ということが検討されていました。
大方の結論としては「コピー機の紙幣複製防止システムのような仕組みを使えばいいのではないか」ということのようです。

 

しかし、どう考えてもそれは不可能です。
3Dプリンターで銃を作る場合、コピー防止システムを迂回することが非常に容易だからです。

 

やったことはありませんが、家庭用プリンターやコンビニにあるコピー機等で紙幣を印刷しようとすると、コピー防止システムが作動して、エラーメッセージが出たり、真っ黒になってしまうようです。

 

実際に「使える」精度の紙幣をつくろうとすれば、できるだけ「忠実に」印刷しなければなりません。
したがって、紙幣のデータを「忠実に」デジタル化しておいて、同じような羅列のデータがきたら、それを排除するだけで、紙幣のコピーは比較的容易に防止できるのです。

 

もし、紙幣っぽいけれど異なったデータの羅列がきたら、それは人の目で見て「紙幣」といえないようなものなわけで、実際に使用することはまずできないでしょう。
ジョークグッズでよくある「一億円札」であれば、コピー機で簡単に複製できるはずです(これに騙されたという詐欺事件がありましたが、普通は騙せません)。

 

 

一方、銃というのは様々な形態があります。
すべての銃のデータの羅列を保存することは不可能です。

 

また、3Dプリンターで銃を作る場合、銃そのものがプリントされるのではなく、銃身やシリンダー、トリガーやグリップなど、様々な部品に分けて出力され、それを人の手で組み立てて完成させる必要があります。

 

銃身はストローやちくわとほとんど形が一緒です。
銃身をプリンターから出力するのを防止しようとすれば、ストローやちくわを作成するのを禁止しなくてはなりません。

 

それに、出力した材料をヤスリで削って仕上げるとすれば、「部品の形」で取り締まることもできません。

 

加えて、銃刀法違反との関係もあります。

 

銃刀法で取り締まりの対象となるのは、「金属製弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び空気銃」のうち、弾丸の威力が「人の生命に危険を及ぼし得るもの」です。
例えば玩具のエアガンであれば銃刀法で規制されていないのですから、3Dプリンターで作ることが許されるのです。

 

以上からすると、例えば
1 組み立てた時、銃になるデータはプリントできなくする
2 削ったりして「1」になりそうなデータもプリントできなくする
3 ただし、人を殺傷する威力がないものは除く

 

という複雑な条件をクリアする禁止プログラムを作らなければなりません。

 

これはどう考えても人の頭による判断が必要で、コンピューターに任せることは不可能です。
銃の設計図をやりとりすることを禁止したらいいじゃないかという気がするのですが、その場合も玩具用のエアガン等と差別化することが不可能となります。

 

 

結局、3Dプリンターで銃の製造を禁止しようとすれば、かなり広範な規制をかけなくてはならなくなります。

 

その場合、3Dプリンターで何も作れないということになってしまい、現実的ではありません。
土管の形をプリントしていたら、「銃の部品を作った」などとして逮捕されることになりかねないのです。

 

3Dプリンターの所持を許可制や登録制にするという考え方もありますが、現在出回っているプリンターの所持者については自発的に申請してもらうしかありませんし、銃の作製を防止する根本的な解決策とはなりません。

 

 

というわけで、今後は法規制が追いつかず銃の密造がどんどん進むという状況になるのでしょう。

 

あまり不便にならず、違法な銃の製造だけをピンポイントで禁止する方法を考えることができたら天才だと思うのです。

 

 

【参考】 銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)
第二条  この法律において「銃砲」とは、けん銃、小銃、機関銃、砲、猟銃その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び空気銃(圧縮した気体を使用して弾丸を発射する機能を有する銃のうち、内閣府令で定めるところにより測定した弾丸の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして内閣府令で定める値以上となるものをいう。以下同じ。)をいう。

 

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