十徳ナイフの所持は軽犯罪法・銃刀法違反で前科一犯?
軽犯罪法1条
左の各号の一に外とする者は、これを拘留又は科料に処する。
同法1条2号
正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者
このように、軽犯罪法1条2号では、「正当な理由」なく、刃物等を「隠して」携帯することを禁止しています。
刃物の大きさは関係ありません。
違反すると拘留又は科料です。これは立派な「前科1犯」です。
なお、銃刀法は8センチ以上の刃物について規制しています。
軽犯罪法違反はそれ以下の刃物等の場合に適用されます。
「十徳ナイフ 軽犯罪法違反」、「カッター 軽犯罪法違反」、「バット 軽犯罪法違反」などで検索すると、様々な方が軽犯罪法で捕まったという話が出てきます。
こういった物は意味もなく持ち歩かないことが第一なのですが、それにしても警察がひどいという案件が散見されるように思うのです。
パターン1:街の中で職務質問、バッグから十徳ナイフが発見された
パターン2:車を運転していたら職質、工具箱の中からカッターが見つかった
パターン3:車を運転していたら職質、トランクからバットが見つかった
パターン4:車を運転していたら職質、ダッシュボードからはさみが見つかった
パターン5:車を運転していたら職質、車内から金属製のマグライトが見つかった
これらはいずれも「軽犯罪法違反」として処理されます。
何度も言いますが前科一犯です。
もちろん、略式・科料とならなければ前科はつきませんが、途中で許してもらっておとがめなしということはほとんどありません。
車の中からバットが見つかったような場合がダメとなると、「じゃあ草野球に行くときはどうするんだ」と思われる方もいらっしゃるでしょうが、その場合は「正当な理由」があるということになります。
ただ、「いつか草野球をしようと思った」とかで漫然とバットを持っていたような場合は間違いなく軽犯罪法違反です。
「草野球の帰りです」ならセーフ。
警察は、「ケンカとかになってカッとなってこのバットで殴らない可能性は0ではないでしょ」とか言ってきます。
どこの警察も(そして検察も)、判で押したようにこういった対応をしてくるので、全国的に指導がなされているのかもしれません。
問題は、ほとんどの軽犯罪法違反が裁判所で争われることなく、略式裁判・科料で終わっていることです。
確かに、9000円くらい払って終わるならそれでいいやと思ってしまう人がほとんどでしょう。
ただ、裁判所で争われないから、無罪判決が無いから、警察がやりたい放題に運用できてしまうのが軽犯罪法違反なのです。
対策としては、次のようなものが考えられます。
・職質されてもポケットの中だとかは見せない、自分から出さない
・「カッとなってこの刃物を使わないとも限らないでしょ」とか言われたら、はっきり「0%です」と答える
・きちんと使用目的を説明する(「正当な理由」を説明する)
・「隠して」ではないことを説明する
・略式ではなく正式裁判にしてもらい、裁判官に判断してもらう
最高裁では、護身用に催涙スプレーを携帯した男性に「正当な理由」があったとして無罪を言い渡しています(最高裁平成21年3月26日判決、ただし、この判決は深夜のサイクリングの際に催涙スプレーを持っていたという事情から「正当な理由」があるとしていますので、一切の所持が認められたわけではありません)。
また、バットを車の中に置いていた場合に、「隠して」ではないので無罪という判断が出たこともあります。
私は、警察の方々にはプロとして敬意を払って接するようにしていますし、我々の安全のために汗を流して頂いていることについて非常に感謝しています。
ただ、立場の違いかどうしても納得できないことがいくつかあって、その1つがこの軽犯罪法違反の処理なのです。
軽犯罪法4条は「この法律の適用にあたっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれ濫用することがあってはならない」と規定しています。
警察の対応にどうしても納得ができない方はご連絡ください。
正式な裁判で争ってみたいというあなた、ご協力します。