片山さんの保釈取り消し。保証金1000万円の行方は!?
連日報道されている「PC遠隔操作ウイルス事件」。
被告人である片山さんが「自分が真犯人だ」として姿を見せたというニュースが新たに報道されていました。
これまでの経緯を簡単にまとめておくと、次のようになります。
1 遠隔操作ウイルスを作成したとして片山さんが逮捕、起訴
2 裁判が始まった段階で保釈が認められる(保証金1000万円)
3 保釈後、「真犯人は別にいる」といった旨のメールが報道各社等に届く
4 このメールを送った携帯電話を「片山さんが」埋めているところを警察が発見
5 更にこの携帯に付着したDNAと片山さんのDNAが「一致」
6 片山さんが「自分が真犯人だ」として姿を表す
7 保釈取り消し決定 ← 今ここ
※ この時系列は現在の報道を元に作成していますが、進行中の事件に関するものであることから、後の報道等の内容によって変更となることがあります。
この事件はウイルスに感染した方の冤罪を生むなど検討する部分は多々あるのですが、現在私が気になっているのは、片山さんの保釈が取り消しになった後、1000万円の保釈保証金がどうなってしまうのかということです。
刑訴法96条1条は、一定の場合に保釈の取り消しを認めており、2条は保釈を取り消す場合に「保証金の全部又は一部を没収することができる」、と規定しています。
というわけで、保釈取り消し決定が下された以上、保釈保証金が没収となるかどうかについても既に決定が出ていることになります。
どうなったかは夜くらいに報道されることでしょう。
なお、イトマン事件で逮捕された「許永中」という方は、6億円の保証金を払って保釈されましたが、その後逃亡したことから全額没収となりました。
このように、逃亡するだとか悪質な場合は没収となるのが普通です。
ただ、今回は逃げたのではなくメールを送って裁判を混乱させるようなことをしただけなので、一部没収程度で済むかもしれません。
ところで、こういう事件を聞いて困るなあと思うのは、保釈に対する裁判所の基準が厳しくなってしまうことです。
東京の通常の事件であれば200〜300万円くらいの保釈保証金を収め、「これだけの大金を納めれば絶対に逃げることはないですし、裁判所の決めた条件も守ります」みたいなことを力説して保釈をもらうことが多いです。
にもかかわらず、今回のように1000万円を収めて何の抑止力にもなっていなかったということになると、同種の事件で裁判所が保釈決定をする際に慎重になったり、保釈保証金がより高額になる可能性があるわけです。
まあ、弁護士としては弁護していたら後ろから刺された!というような気分かもしれません。
今回のメール送信は起訴されている事件と直接関係がないので、無罪を信じて弁護を続けるか、それとも諦めるのか、どういった判断をするのかも気になるところです。
追記1
600万円が没収となったようです。
パソコン(PC)遠隔操作事件で、保釈が取り消されて再び勾留された元IT会社員片山祐輔被告(32)=公判中=について、東京地裁は、被告が納付していた保釈保証金1千万円のうち600万円の没収を決めた。
弁護団によると、保釈金は母親が用意したといい、「全額を没収しなかったのは、母親の生活を考慮したためではないか」としている。
引用元:片山被告の保釈金600万円を没収 PC遠隔操作:朝日新聞デジタル
追記2
平成27年2月4日、東京地裁で懲役8年の判決が下されました。
弁護士会の出している「量刑調査報告集V」を確認したのですが、業務妨害罪や公務執行妨害罪ので下されている判決はほとんどが3年以下。
もちろん本件は業務妨害罪以外でも起訴された上、やったことが格段に悪質だということもあるのでしょうが、かなり重いなというのが印象です。