ヤフオクでAKB投票券詐欺騒動!「騙してない」は通るのか?
AKB48の総選挙の投票券をヤフーオークションで購入したところ、既に投票済で使用できなかったというニュースが流れています。
投票券は各CDに1枚入っており、表記されたシリアル番号を投票サイトに入力して投票を行います。
この番号は1度しか使用できないため、使用後の投票券を譲り受けても投票できないのです。
今回は、1000枚セットの投票券が95万円で落札されています。
1枚約900円。
ざっと調べたところ投票券がついていた「ラブラドール・レトリバー」のCDが大体1300円なので、普通に購入するより約400円お得です(投票券が使えるのであれば)。
では、使用できない投票権を売却することは、詐欺罪(刑法246条1項)となるのでしょうか。
まずは実際の出品ページをご覧ください(ヤフーオークションのページは数ヶ月で消えてしまうため、どなたかがウェブ上に保存してくれています)。
http://megalodon.jp/2014-0530-1905-02/page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/179501262
これを見ると「商品の状態:中古」、「返品の可否:返品不可」、「いかなる場合も返金、返品は対応致しません」などと書かれています。
出品者としては、「中古」ときちんと書いてあるのだから、投票できなくても仕方ないじゃないかと主張することが考えられます。
一方、落札者としては、「95万円で(1枚約900円で)売っていたのだから、投票券として使用できると考えるのが普通だ、こんなの詐欺じゃないか」と反論するでしょう。
「騙してない」との主張は通るか。
詐欺罪が成立するには「人を欺く行為」が必要です。
積極的に詐術を行って虚偽の事実を告知した場合はもちろん、あえて事実を告知せず、相手の錯誤を利用した場合も「欺く行為」といえます。
欺く行為は、作為でも不作為でもいいのです。
ただ、不作為の場合、要は事実を告知しなかった場合については、「告知すべき義務があるのに、わざと言わなかった」ことが必要です。
代表例としては、保険契約をするときに、自分の病気をきちんと告知しなかったような場合などです。
ごちゃごちゃしてきたので整理します。
不作為で「騙した」というためには、
1 相手が錯誤に陥っている
2 事実(真実)を告知する義務がある
3 なのに告知しなかった
という条件が必要となります。
今回の場合、事実は「投票できない」のに、落札者は「投票できる」と考えていました。
よって落札者が錯誤に陥っていたことは明らかです。
そうすると、騙したかどうかのさかい目(争点)は、
1 告知義務はあったのか
2 (告知義務があるとして)ちゃんと告知をしたか
という点になります。
弁護人なら、こんな風に主張するでしょう。
「そもそも告知義務はない。また、万が一告知義務があったとしても、出品者は『中古』と記載した。よって、事実を十分に告知していた。」
これに対して検事は次のように反論することが考えられます。
「今回の投票券は投票以外に使用できず、投票後はほぼ無価値となる。
したがって、落札者にとっては投票できるかどうかが非常に大きなポイントであった。
よって、売買の際には、『投票済』という事実を告知する義務があった。
また、出品者は『発送はCD開封後の発送となります』と書いていることから、『中古』というのは、『CDの封を開けて投票券を取り出した』ことを意味すると考えるのが自然だ。
単に『中古』と書いただけでは十分に告知義務を果たしたとは言えない。」
どちらが説得的かあなたも考えてみてください。
なお、刑事上で詐欺となれば民事上も詐欺となるでしょうから、契約を取り消してお金を返してもらうことができます。
これは「返品不可」と書いてあっても変わりません。