痴漢被害者の慰謝料の相場はいくら? 弁護士が教えます!
定期的に痴漢の相談を受けます。それも、痴漢被害者の方からの相談が増えています。
さて、痴漢の被害を受けた場合、加害者からどのくらいの慰謝料を支払ってもらうことができるのでしょうか。
一般に「相場」と言われているのは概ね「30〜50万円」です。
なぜ相場なんてものがあるのかと思われる方もいらっしゃるでしょう。
慰謝料というのは気持ちの問題です。
痴漢被害を受けて嫌な目に遭った上、駅や警察署や検察庁で時間を取られて「30〜50万円」というのは少なすぎると感じる方も多くいらっしゃるはずです。
ただ、裁判所は前例に従って判断をします。
この手の犯罪被害の慰謝料というのは判決をとっても100万円くらいです。
一方、弁護士会の旧報酬規定によると、着手金は最低10万円、成功報酬は16%、裁判をするとなったら訴訟用の印紙代や切手代が合わせて2万円ほどかかります。
何ヶ月も争って、100万円という判決をもらっても、弁護士に頼むだけで30万円くらいの費用がかかるのです。もちろん、100万円という判決が出る保証もありません。
ということになってくると、素早く「30〜50万円」で和解してしまったほうがいいという話になり、大体このくらいの金額が任意和解の際の相場となってくるのです。
それから、意外と知られていないのが、「痴漢被害者となったらスピードが命」ということ。示談に適した期間は、実は2週間〜2ヶ月ほどしかないのです。
痴漢を駅の職員に引き渡し、その場で警察が逮捕したとします。
逮捕は3日間、勾留はその後10日間(延長となったら更に10日間)、最初から身柄が警察にある場合は、事件から23日後に起訴されるか決まります。
ここで加害者の、要するに犯人の側になって考えてみてください。
「初犯の場合、示談できれば不起訴となることも結構ある」と言われています。
この23日の間に示談できれば不起訴、要するに前科一犯にならなくて済むかもしれないのです。
というわけで、加害者がとりわけ示談したいと考えるタイミングが、この「起訴前」の時期ということになります。
この間なら、相場の上限近い金額(例えば40〜50万円)を払ってもらうという話にもっていきやすいでしょう。
逆に、起訴されれば罰金はほぼ確定です。罰金額は初犯なら大体30〜40万円。
加害者が「罰金を払ってお金がない」だとか、「弁護士をつけて訴えるなり何なりしてくれ」と開き直ってしまえば話し合いで解決することが難しくなってしまいます。
なお、ちゃんと家庭や仕事がある人は途中から在宅で捜査が進むこともあります。
とはいえ、この場合でも起訴までは1〜2ヶ月。
急ぐ必要があることに変わりありません。
ということで事件の流れをまとめます。
@ 痴漢事件発覚
↓
A 逮捕(3日間)
↓
B 捜査:勾留の有無によって違うが大体10日〜2ヶ月
※ 大体この辺りで弁護士がついて、検事から「加害者が示談したいといっているが弁護士に連絡先を教えて良いか」という連絡がある
※ 示談のタイミングとしてはこの辺りが良い
↓
C 起訴・不起訴が決まる
被害者の取るべき対応としては大きく分けて2つ。
1つ目は、検事から「弁護士に連絡先を教えていいか」と言われた時に「いいえ」ということです。
これで加害者の罰金(前科一犯)がほぼ確定します。
2つ目は「はい」と答えて弁護士からの連絡を待つこと。
大体電話がかかってきますので、こちらの希望額などを伝えて話がまとまればその旨を盛り込んだ示談書を作ってくれます。
なお、示談書を作る際に「許す」だとか「被害届を取り下げる」という文言を入れるかどうかは要検討。
ただ、これを入れないと慰謝料を払わないみたいな話になってしまうので普通は入れるべきです。
というわけで、今日は痴漢被害に遭われた方の側から書いてみました。
なお、ここに書いたのは一般的な事例を元にしています。
実際の事件は様々なバリエーションがあるので必ずこの通りになるというわけではありません。
事件から結構経ってしまった、という方もご安心下さい。
この期間が過ぎても示談することは当然できます。
また、ちょっと多めに取るコツだとかもあります。
気になった方は専門家に相談されてみてください。