詐欺師は安心させるために書かせる。借用書の罠。
定期的に「お金を貸したのに返ってこない。騙されたので警察に行きたい」という相談を受けます。
ただ、残念ながらお金が返ってこないからといってすぐ詐欺になるわけではありません。
以前もブログで取り上げましたが、詐欺というのは成立までのハードルが結構高いのです。
じゃあ、どんな借用書を作っておけば安心なの?
これだから安心だという借用書はありません。
どんなにしっかりしたものを作っても、破産してしまえば返済の義務はなくなりますし、逃げられてしまえば回収が不可能になります。あと普通は詐欺になりません。
ただ「伊藤太郎は、樋口花子に100万円を貸した。返済日は平成26年7月末日である。」というように、誰が誰にいくらを貸したのか、そして「返済日がいつなのか」ということだけは絶対に明記するようにしてください。
その上で、
@作成日を記し、
A自筆の署名と押印をもらえば
契約書としての体裁は一応整います。
加えて、公正証書にしたり、連帯保証人を付けたり、土地を担保にとれば安心度が増します。
よく、「貸付金は100万円とする」とか書いた上でその下に2人の名前が並んでいるだけの書面がありますが、これだとどちらが貸主か分かりません。
それから返済日も忘れずに、カイジで利根川幸雄も言っていました。
「今回、まだその時と場所の指定まではしていない。そのことをどうか諸君らも思い出していただきたい。つまり…我々がその気になれば金の受渡しは10年後、20年後ということも可能だろう……ということ」と。
返済日を定めていないと利根川状態になっちゃうの?
そんなことはありません。
法律の建て付けとしては、内容証明だとかで「返せよ」と催告して、ある程度期間が経てば弁済期が来たことにして請求できるという話になっています。
ただ、こういう手順を踏むのは手間ですし、そもそもお金を貸した相手から「返済日は決めてない」とか言われても腹が立つので、きちんと決めておくことにこしたことはありません。
「500万円を貸して欲しい、一ヶ月後に利息500万円をつけて1000万円返す。もちろんちゃんとした連帯保証人もつける」と言われたんだけど。
あまりの美味しさに思わず契約してしまいそうになります。
しかしこれは「お金を貸す方」にとって最悪の契約条件です。
え!?何がいけないの??
出資法に違反します。
この法律では、年109.5%(うるう年は109.8%)を超える割合による利息の「契約をした」、「支払いを要求した」「利息を受領した」場合について、5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金またはその併科という重い罰則を課しています。
かなり念入りに規定してあるので逃げ道はありません。
「お金返して」と言ったらダメなのです。
というか、契約書を書いた時点でアウト。
自分の犯罪行為が紙に残ってしまっているのですからヘタをしたら警察に逮捕されます。
「自分は相手が作ってきた書面にサインしただけだから」とか言ってもダメ。
だって、この利息でOKしたんですから。
請求しに行ったら相手から「出資法違反だ」と逆ギレされて終了です。
これこそ詐欺のようなものですが、でも相手の詐欺だということを証明するのは難しく、かつこちらの出資法違反の証拠は書面で残っているという最悪の状況となります。
じゃあ、利息はどうしたらいいの?
専門家に相談しないなら利息は付けないほうがいいかもしれません。
分割で返してもらった場合などは計算も複雑になりますし。
ただ、利息制限法の上限金利が年15%なので、これ以下にしておけばまず安心でしょう。
(追記)
なお、営利活動の場合の適用だけでなく、二人だけの約束など、個人間でも出資法違反になります。怖いですね。