【メディアリテラシー】神戸女児死亡事件 逮捕された男は犯人なのか
神戸市長田区で小学校1年生の女児の遺体が見つかった事件で、47歳の男性が逮捕されました。
昔からよく言われることですが、容疑者逮捕=犯人のような報道が行われることから、ついついこの男性が殺人事件の真犯人だと考えてしまいがちなのですが、まだ時期尚早です。
印象操作に惑わされないためには、どういったところに気をつけてニュースを読めばよいか考えてみました。
1 今回逮捕されたのはあくまで「死体遺棄」
死体が発見された→誰かに殺されたということは直ちに認定できません。
事故に巻き込まれたのかもしれないですし、自殺したのかもしれません。
死因が判明しない以上、殺人と判断するのは危険です。
なお、今回は死体がいくつかの部分に分かれていたようです。
生きたまま分解したとは考えにくいことから、死亡後に分解したと判断するのが自然ということになると「死体損壊」くらいまでは言えるかもしれません。
さて、ここまでお読みになった方は、へ理屈ばっかり言いやがってと思われるかもしれませんが、実は同じようなパターンで殺人にならないものが結構あります。
「白骨死体 殺人 無罪」だとかでググって頂ければ色々と出てくると思うのですが、とにかく「殺した」という証拠が出ない以上あくまで「死体遺棄」です。
2 死体遺棄の証明はどうやってするのか
死体遺棄だけを証明するのは意外と難しいです。
もちろん、自殺ではなく事故でもなく人為的に運ばれたと考えられる死体があれば、「誰かが遺棄した」ということまでは認定できますが、「誰か」までは特定できません。
これが個人の家の敷地内だったり、他人が全く入らないような場所だったりすればいいのですが、今回死体が発見された場所は行こうと思えば誰でも行けるような場所でした。
なお、報道では「地元の人しか入らない」などという声が紹介されていましたが、これは悪質な印象操作です。
映像を見たところ現場は公道から入れそうな緑地でした。
「誰でも入れる場所です」という報道をすべきではなかったでしょうか。
というわけで、遺棄されたビニール袋等から逮捕された男性の指紋でも出てくれば別ですが、そうでない限り「死体が置かれた前後に男性の姿を現場付近で見た」といった事情を積み重ねてようやく死体遺棄が証明できることになります。
なお、逮捕された男性のDNAが付着したタバコや診察券(?)などが同時に発見されたという報道もありましたが、これらの物が女児の死体と同じ袋から出てきたのか、別の袋から出てきたのか、また置かれたのは死体と同時だったのか、それとも現場には他のゴミも不法投棄されていたのかなどは現時点では不明です。
というわけでこのタバコや診察券を使ってどのように死体遺棄の犯人に結びつけるかも難しいところです。
3 逮捕された男性が黙秘していることについて
自分じゃないならきちんと弁解するだろう、黙秘=犯人だ、という論調も聞かれましたが、黙秘したことをもって不利に考えてはダメというのが裁判のルールです。
これをもって犯人と推定したり断定したりすることはできません。
4 まとめ
結局、現段階では確定的なものはそんなにありません。
報道は、中立っぽい形をとりながら、ちょいちょい「逮捕された男性=殺人犯人」という風に印象を操作しようとしているわけです。
などというところまで書いた辺りで、被害者のバッグが犯人宅から発見された的な報道がありました。
そのうちどんどん新証拠が出てきたり犯人が自供したりして、世間の論調は「男性=殺人犯人」になってしまうかもですが、裁判が終わるまでは無罪推定が及ぶということもちょっとだけ念頭に置いて報道をご覧頂きたいのです。