都道府県で唯一「淫行条例」がない、長野県の話

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都道府県で唯一「淫行条例」がない、長野県の話

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長野県が、青少年保護育成条例の制定へ向けて動き出そうとしています。
その中で特に注目されているのが「淫行禁止規定」の問題。

 

淫行条例がない、長野県の話

 

全国の都道府県は、条例で青少年(18歳未満の者)と「みだらな性交等」をすることを禁止しています。

 

なので、女子高生とラブホテルに行ったりすると逮捕されたり有罪になったりします。

 

ところが、長野県にはこの種の条例がありません。

 

というわけで、「ネット上では『10代の女の子と遊びたいなら、長野へ行けばいい。警察に捕まらないから』という趣旨の書き込みが横行している」などという報道までなされる始末。

 

しかし、本当にそうなのか、また現在、どういった法規制がなされているのかという点について掘り下げようというのが今回のテーマ。

 

※ご注意:当ブログは未成年者との淫行を推奨する意図は一切ありません。
もちろん、長野県も未成年者との淫行を推奨していません。
以上をご理解の上でお読みください。

 

Q:長野県内で女子高生と性交等をしても、犯罪にならないというのは本当でしょうか。
A:基本的には本当です(ただし、以下のように犯罪となるケースもあります)。

 

Q:もう少し詳しく伺います。例えば東京都在住の男性が「長野県」に行って女子高生と性交等をした場合、東京都の条例で処罰されますか。
A:されません(というのが通説です)。

 

「条例」は県や市などの地方自治体が制定します。
このように条例には「地域の立法」という性格があるので、効力が及ぶ範囲は原則としてその条例等を制定した県や市町村の区域内に限られます(門山泰明[編集]『最新地方自治法講座(2)(条例と規則)』(ぎょうせい、2003年)60頁参照)。

 

というわけで、条例がない長野県では淫行を処罰できないのです。

 

どの都道府県の方であっても長野県内にいる以上は長野の条例が適用となるので、出身や住民票の所在地にかかわらず淫行は処罰されないという結論になります(長野県内であっても個別に条例を定めている市町村があります、また、他の法令の適用を受けることもあります。いずれも後述。)。

 

 

Q:長野県在住の女子高生と「東京都内」で淫行等をした場合、処罰されますか。
A:されます。

 

これは一つ前のQ&Aと逆のパターン。
いくら住所地が長野県でも、東京都へ行った時は東京都の条例に縛られます。

 

なお、こういった際は長野県の警察が動いて東京都の条例に基づいて逮捕することもあります。
「長野県警が淫行条例に基づいて被疑者を逮捕」などという報道があるとびっくりしますが、要は県外で行われた淫行(で、女子高生が長野在住)だということです。

 

 

Q:長野県だったらどこでも淫行は処罰されないのですか。
A:東御市(とうみし)のように個別に条例を定めている市町村があります。

 

サマーウォーズの舞台となった上田市のちょっと東、東御市は淫行条例を定めています。
現にこれで処罰された例もあります。

 

東御市の区域内(一定の陸地(地下及び内水面を含む)とそれに接続する了解及び上空)に一歩でも入ったところで淫行をしたら処罰の対象です。
この他、条例を定めている市町村があるかもしれません。

 

なお、上田市と東御市を貫く国道18号線沿いにはいくつかのラブホテルがあるようですが、上田市には淫行条例がないようなので、上田市か東御市かで逮捕されるかどうかが変わることになります。
数百メートルも離れていないのに…と思うのですが、こういうのが条例なのです。

 

 

Q:長野って小学生と性交等をしても処罰されないんですか。
A:されます。

 

どう考えてもダメというか書いてて頭が痛くなってきたのですが小学生はアウトです。

 

13歳未満の男女に対してわいせつな行為をすると、強制わいせつ罪で断固処罰されます(刑法176条)。
これは国が決めた法律なので条例と違って長野とか関係なく適用されます。

 

ところでこの強制わいせつ罪は13歳「未満」を対象としているので、13歳になった青少年は適用外。
ということは、長野県で規制の網から外れているのは13歳から17歳までの青少年ということになります。

 

 

Q:私は法学部の学生です。現在学部2年でこの春から刑法学のゼミに所属する予定です。さて、そんな私があくまで刑法学的な観点から伺いたいのですが、長野県内における淫行について、行為の態様(平たく申し上げるとプレイ内容)によって処罰されたりされなかったりということはあるのでしょうか。それともないのでしょうか。心配で夜も眠れません。
A:なんでそんなに必死なんですか…一応の答えとしては「行為の態様によっては処罰のおそれがある」となります。

 

第1に、児童福祉法を根拠として処罰されたケースがあります。

 

具体的には「中学生教師が生徒にバイブレーターを渡し、操作方法を示した上で自慰行為をさせた」ことが処罰対象となりました(最高裁第三小法廷決定平成10年11月2日刑集52巻8号505頁)。

 

児童福祉法34条1項6号は何人も「児童に淫行をさせる行為」をしてはならないと定めています。
ポイントは「させる行為」と受身形になっていること。

 

淫行するのではなく、「させた」ことがアウトだったわけです(なお、正確には他にいくつかの要件があります)。
児童福祉法を適用したことについては学者などから批判もありますが、最高裁の判断なので実務はこれで動いているとお考え下さい。

 

第2に、18歳に満たない「児童」の裸体などを撮影すると児童ポルノ禁止法(児童ポルノの製造)によって処罰の対象となります。

 

 

以上、問題となりそうな部分についてざっと検討を加えてみました。最後に、なぜ長野にはこれまで青少年保護育成条例や淫行条例がなかったかという点について検討してみましょう。

 

長野県には伝統的に、「青少年の健やかな育成を県民が見守るべき。条例で規制すべきではない」という考え方があります。

 

確かにこのような理念に則って青少年の保護・育成を十全に行うことができるとすれば素晴らしいでしょう。

 

しかし、最近では中高生がLINE(ライン)のアプリなどで簡単に成人と会うことができ、県民が見守るだけでは青少年を保護できないという現実があります。

 

長野県の新聞社や弁護士会は法規制に反対の立場のようですが、私個人は法規制を行わざるをえないのではないかと考えている次第です。

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