【注意喚起】 架空請求メールの内容を弁護士が検討してみた
先日、携帯電話に架空請求メールがきました。
何だかこういうの久々です。
今更かよ、という感じもするのですが、ひっかかってしまう方がいらっしゃるとよくないので、注意喚起も兼ねて内容を検討してみました。
以下「>」がついている部分は架空請求メールからの引用です。
まずは冒頭。
>当職らは、債権の回収の任を受けた委任弁護団です。
どうみてもおかしいですね…
確かに弁護士は、「当職らは」という書き出しをよく使います。
私も内容証明郵便を送る際には大体この手の書き出しです。
ただ、弁護士は依頼者から委任を受けて連絡をするので、必ず依頼者の名前を書きます。
「当職は、●山▲男を代理して、貴殿に対し通知いたします」といった感じ。
こういった記載がないだけで怪しさ100%です。
それから「委任弁護団」という表現もおかしい。
そもそもこういった用語は使わないですし、本当に弁護団なら代表者の名前を書きます。
>この度、貴殿がログインした通信機器からの有料番組サイトの未納通信料金を、インターネット事業者より取得しました(貴方のプロバイダへ調査申請を行いメールアドレスの連絡先を取得し、連絡しています)。
日本語がおかしいので意味が分からないのですが、どうやら「回線事業者」や「プロバイダ」から私のメールアドレスを取得したということを言いたいらしい。
ただ、この文書だと回線事業者とプロバイダのことを混同している節があります。
私も詳しくは分からないのですが、回線事業者というのはNTTとかKDDIのことで、プロバイダというのはニフティとかのことじゃないのか。
確かにプロバイダは、弁護士が適式に申請を行えば個人情報を開示してくれることもあります。
でも、そのためには当然ですがきちんとした証拠が必要です。
そもそもサービスを使っていないわけですから証拠なんてないわけですし、であれば開示請求も不可能です。
それに、この架空請求メールの送信者は有料番組サイトを運営しているようですが、代金を確実に回収したいのであれば、先にクレジットカード番号を入力させるなどしておけばいいはずです。
先にサービスだけ提供しておいて後から個人情報をプロバイダに問い合わせるというのは変な話です。
>このまま連絡がない場合は、法的手段への移行を行います。
具体的には、民事訴訟を直ちに提起し、貴殿が給与取得者であれば、勤務先からの給与債権を差し押さえ、貴殿が個人事業主で、売掛金などの債権を取引先に有すれば、その債権を差し押さえ、貴殿のご自宅が賃貸物件であれば敷金返還請求権を差し押さえ、貴殿がご自宅を所有されていれば、その所有権を差し押さえた上で競売を申し立て、更には、ご自宅内にある動産など、調査しうる範囲の貴殿の資産に対して執行手続きを申し立て、以上により債権の回収を図ります。
色々書いてありますが、民事訴訟を起こすには最低でも相手の住所と名前が必要です。
裁判というのは“裁判所から「郵便で」書類が届いた”段階からスタートになるからです。
相手はこちらの住所や名前を知る余地がないですから、郵便で送ることも不可能で、裁判なんて無理だろと一蹴できます。
なお、公示送達という郵便が届かなくても裁判が始まるという仕組みもあるのですが、これをするにも相手の名前が分からなくてはいけませんし、住民票や自宅住所と思われる場所の調査報告書を裁判所に提出しなければなりません。
というわけで、どう考えても裁判は無理です。
また、差押えというのも無理でしょう。
給料の差押えをするには勤務先が分からないといけません。
全くの他人の勤務先を調べるのは至難の技です。
売掛金債権だって他人が分かるようなものではありません。
私が誰かに物を売ったという情報を、なぜプロバイダ経由で把握できるのでしょう。
最後に、「所有権を差し押さえる」などという表現はつかいません。
「不動産を差し押さえる」なら言いますが。
以上、ちょっと確認するだけでも変なところだらけです。こんなメールが届いても返信したりせず、絶対に放置してください。
あと、無いとは思いますが万が一裁判所から書留のようなものが届いた場合だけはすぐに対応する必要があります。
さっき書いたように“裁判所から「郵便で」書類が届いた場合”には裁判が始まってしまうからです。
放置すると強制執行を受けることもありえます。
こんなときはお近くの弁護士会で相談してみてください。
これ以降、私のところには架空請求メールはきていません。
きたらまた報告します。
皆様の中で、「こんなの来たよ」というのがあれば教えて頂けますと幸いです。