車と電車・列車が踏切事故で接触! 損害賠償の額と責任は?
最近毎日電車が遅れます。
湘南新宿ラインや横須賀線など長い距離を走る電車が増えたことから、どこかで発生した事故が全体に影響することが多いようです。
遅れの原因は色々ですが、「踏切で自動車と電車がぶつかった」という事故が増えている気がします。
今年の1月29日には、東武東上線の大山駅付近の踏切で、軽自動車と電車が接触し、通勤や通学に大きな支障が出ました。
さて、踏切事故で電車を止めてしまった場合、どんな責任を負うのでしょう。
刑事上の責任としては、過失往来危険罪(刑法129条1項)が考えられます。
法定刑は30万円以下の罰金。
もちろん、被害者が怪我をした場合などは他の罪が成立する可能性もあります。
また、民事上の責任として、損害を賠償しなくてはならない可能性があります。
この金額がしばしば1億円など膨大な金額になるのでは?と噂されていたりするのですが、必ずしもそうとも限りません。
例えば先日、名古屋高裁は、線路に入って電車を止めた認知症のお年寄りの遺族に対して359万円を支払えという判決を下しました。
認知症のお年寄りを介護していた遺族に対する責任を認めたことから、この判決の評判は非常に悪いのですが(私もひどい判決だと思います)、とにかく、事故で電車を止めたら1億円というわけではないのです。
では、損害の金額はどうやって決まるのでしょう。
基本的には「現実に発生した損害額」が基準になります。
例えば、車両の修理費や、振替輸送にかかったお金、特急券の払い戻し費用などが請求される可能性があります。
したがって、振替輸送や特急券の払い戻しがなかったような場合は請求額が低くなります。
もちろん、鉄道会社には「2時間以内の遅れなら特急券の払い戻しはしない」といった約款がありますから、遅れが少ない場合には払い戻し分の損害も生じません。
また、事故と「直接」関係のある損害しか填補されません(正確には「相当因果関係のある損害」と言います)。
闇金ウシジマくんという漫画で、「電車が遅れて1億円の契約がパアになったからその分賠償しろ」みたいなことを駅員さんに言っているシーンがありましたが、こういうのは事故から「直接」生じた損害ではないので填補されないのです。
刑事事件ブログですが、今日は途中から民事の話になってしまいました。
まあでも、刑事事件をやっていると民事の話が色々と出てくるのです。