【またもマスコミのミスリードか】 仏具を用いた相続税対策が多分無理な理由

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【またもマスコミのミスリードか】 仏具を用いた相続税対策が多分無理な理由

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あけましておめでとうございます。
昨年は色々ありましたがどうにか記事を書き続けることができました。
これもご覧頂いている皆様、そして紹介して頂いているサイト様のお陰です。
本年もどうか当ブログをよろしくお願いいたします。

 

金の仏具で相続税節税対策

 

さて、年末にかけて、いくつものメディアで「仏具を買うと相続税対策になる!?」的なニュースが流れていました。

 

平成27年1月1日から相続税が上がったこともあり、「節税」が一つのトピックになっている模様。

 

というわけで、相続税をできるだけ抑えようと色々と知恵を絞っている方がいるようなのですが、先に結論から言います、

 

中間層が純金仏具を買って相続税対策をするというのは基本的に無理

 

です。

 

 

どう法律が変わったのか

 

相続税というのは、亡くなった人の財産をもらうときにかかる税金です。
ただ、財産がそれほどない場合にはかかりません。

 

これまでは、

 

「5000万円+1000万円×法定相続人の人数」

 

という計算をして、この金額より多い財産が残っていた場合に相続税がかかったのですが、

 

平成27年1月1日からは、

 

「3000万円+600万円×法定相続人の人数」

 

という計算になりました。

 

具体的には、父、母、自分、弟の4人家族で父親が亡くなったとすると、去年までは
5000万円+1000万円×3 → 8000万円 より多く財産があると相続税がかかったのですが、

 

これからは、
3000万円+600万円×3 → 4800万円 より多く財産があると相続税がかかることになります。

 

 

仏具を買って相続税対策ってどういうこと

 

スキームとしてはこんな感じ

 

・預貯金6000万円、相続人は妻と2人の子
→ 4800万円を超えていてこのままじゃ相続税がかかる
・ピコーン!「祭祀財産」って非課税じゃんよ
・純金の仏具を2000万円で購入
・預貯金が4000万円に減る
相続税かからない→(゜Д゜)ウマー

 

という理屈なのですが、果たして本当にうまくいくのでしょうか…

 

 

うまくいくわけがありません。

 

正確にいうと、すごくお金持ちの人が税理士さんと相談しながらやれば多少相続税が下がることはあるかもしれませんが、いわゆる中間層の節税対策としてはほとんど意味がないばかりか、かえって損になってしまうでしょう。

 

確かに、「祭祀財産」は非課税です。
墓地や墓石や仏壇など、先祖をまつるための財産には基本的に相続税がかかりません。

 

でも、貯金を過剰に使って純金の仏像を買って、「これは祭祀財産だから非課税」などという理屈が通るはずがありません。

 

もう一度言います。
「通るか!こんなもん!!」。

 

注意していただきたいのですが、仏具=非課税ではありません。
仏具が法令でいうところの「祭祀財産」と税務署に認められて初めて非課税になるわけです。

 

遺産が1億円の人が1億円の祭祀財産を買うというのはどう考えてもおかしな話。
もちろん購入した仏具の一部は祭祀財産と認めてくれるかもしれませんが、残りは祭祀に関係ない財産と判断されるでしょう。
なので普通に税金が課せられます。

 

 

いや、でも新聞だとかにも書いてあるし、節税になるんじゃないですか…

 

わかりました、具体的に考えてみましょう。

 

上で見たとおり父・母・兄・自分の4人家族で父が亡くなった場合、4800万円を超える遺産があると相続税がかかります(※いくらをこえると相続税がかかるかは相続人の人数で変わります)。

 

相続税がかからない例
・不動産:2000万円、預貯金:1000万円 遺産の合計3000万円

 

→4800万円以下なので相続税はかかりません。

 

相続税がかかる例
・不動産:2000万円、預貯金:3800万円 遺産の合計5800万円

 

→4800万円を超えた分について相続税がかかります。

 

具体的には1000万円に対して10% → 100万円を支払う必要(※税率は基準の金額をいくら超えたかによって異なります)

 

 

じゃあ、このような場合はどうでしょうか。・不動産:2000万円、預貯金2800万円、純金の仏具1000万円

 

 

もし全部が祭祀財産と認定されれば……

 

やりました!!相続税はかかりません。(こうやって認定させるのがほぼ無理なことは上述した通り)。

 

 

とはいえ得をするためには次のハードルがあります。

 

1000万円で買った仏具が1000万円(相続税のことを考えても900万円以上)で売却できなければ結局は損をしてしまうことになるからです。

 

そこで、中古の純金仏具が一体いくらで売れるのかが問題となるわけですが、正直そんなに高くは売れません。
まあ、祭祀用財産なのでそもそも売るという話が出ること自体おかしいわけですが…

 

お世話になっている古物商の方に聞いてみたところ、「基本的に金属の重さで判断して価格を決める。芸術的価値がないものがほとんどなので、それ以上の値段はまずつかない」という回答を頂きました。

 

例えば後で紹介する朝日の記事に載っていた純金製の仏像は、80グラムで133万円(税込み)です。
現在の金の値段は大体1グラム5000円ですから、この仏具を古物商で売却しようとしても80グラム×5000円で40万円ほどにしかなりません。

 

買ったときの3分の1、これなら税金を払ったほうがましです。
1000万円の中から100万円を相続税として納めていれば900万円が残ったのに、下手に仏具にしたがために、3分の1に減ってしまったわけです。

 

 

と、現状はこのような感じなのですが、一部マスコミでは仏具が相続税対策になる的な報道がされているように思えてなりません。

 

(朝日新聞が記事を削除してしまったので以下に記事の抜粋を書いておきます。なお、例えばこちらの日経新聞の記事のように「度を超えた課税逃れは、当然ながら許されない」と報道しているマスコミも。)

 

例えば朝日新聞のこちらの記事をご覧ください。
一体どんな印象を受けたでしょうか。

 

読むのが面倒な方のために仏具の部分の要点を抜粋すると以下の様な感じ。

 

・相続税の増税に伴い、中流層が対策に走っている
・「相続税がかからないんでしょ。うちにも仏壇があるので興味があって」(町の人の声)
・金の仏具を買うことで節税効果を期待する人が増えている
・仏具であっても投資目的なら課税対象になり得る。節税効果には疑問の声もある。

 

 

これをご覧になって、「うちも仏具を買うと相続税対策になるじゃんよ!!」という印象を受けたとしたら問題です。
これまで考えてきたように実際はそうならないことがほとんどだからです。

 

もちろん記事の最後では「課税対象になり得る」「節税効果には疑問の声もある」など注意喚起をしています。
でも、その前の部分からすると、仏具が相続税対策になるという印象を受けた方も多いのではないでしょうか。

 

巧妙なのが「相続税がかからないんでしょ」という町の人の声を紹介したり、「節税効果を期待する人が増えている」と誰とも分からない人の期待を記事化している点。
読者から相続税対策にならなかったと文句を言われても「いや、他人の意見ですから」と逃げることができます。

 

最近この会社はよく社長が謝っていますが、この記事を見る限り、まるで成長していない…という気がしてなりません。

 

 

というわけで、メディアで紹介されたような純金の仏具を購入する手法では中流層の相続税対策にはならないんじゃないか、というのが私の結論。

 

じゃあ結局どうやって対策したらいいのか、ということですが、これまで色々な頭の良い方が工夫して、更にそれを対策するための法律ができて、といういたちごっこが行われているので、我々がちょっと考えただけでうまくいくような方法は中々ありません。

 

王道は贈与税の非課税枠(年間110万円)や、「扶養義務者間相互の生活費等に充てるための贈与」だとかをうまく使うだとか、朝日の記事の中にあった不動産を建てる方法だとかが考えられます。

 

とはいえ、この辺は素人判断を行うと「脱税」になりますし、それ以外にもうまくいくかどうかという点については色々な問題があります。
やってみようという方は必ず!税理士さんに相談して問題ないと確認してからにしてください。

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